コラム:コード機能を決める音



  特に内蔵音源でオリジナル曲を作るときなんかは、キー

ボードのパートでコードを鳴らしたくても、発音数不足で

分厚いコードは使いづらいですよね。仮にピアノで4声を

リザーブしたとして、残りはベース、メロディ、オカズや

サブメロ、ディレイ…。これだけで終わります。ゲームで

の用途を考えたら、効果音割り込みでさらにパートのやり

くりが苦しくなって、もう破綻は確定。使えやしません。

  必然的にコードパートは削られるか、1声のピロピロパ

ターン(アルペジオ)でお茶を濁されたり、1チャンネル

和音という、苦行のようなFM音色いじりさえ強いられるこ

とでしょう。泣く泣くコードパートから何音か削ったら、

なんだかハーモニーがペラペラになってしまった…68内蔵

音源の音楽ライフの宿命ですが、何か抜け道はないか?  

そこでこのコラムでは、「いかにして、少ない発音数でコ

ード感を出すか?」という方法を探りましょう。それには、

「コードの機能を決める最低限の音は何か、というポイン

トを押さえることが大事です。逆にいうと、必要ない音は

どんどん削っていって、なおかつコード機能を十分に果た

しているという理想の状態を達成するのが目的です。

譜例を見てください。

  

● 音で確認=非対応メニューです

  ふつーのバンド形態であればベースがいるでしょう。そ

してベースは通常コードのルートを弾くという話をしまし

た。この前提に立って話を進めます。

  まずキーボードパートからルート音を削ってしまいます。

ベースがルートを弾いているなら、キーボードで重複させ

るのは無駄というものです。すると下のようになります。

  

● 音で確認=非対応メニューです

  次に完全5度。完全5度はルート(1度)の倍音として

潜在的に耳が補完している音程であるため、省略が可能で

す(ただし増/減音程に変化した5度は省略してはいけま

せん)。よって完全5度も消してしまいましょう。


  

● 音で確認=非対応メニューです

  おっと、コードというより、ただのインターバルになっ

てしまいました。残った音は3度と7度。3度の音はコー

ドの性格を決める重要な音程、7度はロックやポップスな

らなくてもいい音ですが、ドミナント7thコードの7thま

で削ると、ドミナントモーションの機能が失われるので、

残した方が無難です。したがって、結果的には、ベースが

ルートを鳴らしてさえいれば、あとは3度(7度)だけが

鳴っていればコードは特定でき、コードの機能も保持され

ます。


  しかし、これは「いかに音を削るか」に関する極端な内

容の話で、音を抜くといっても実際には完全5度もきちん

と鳴らした方がサウンドは安定しますし、隣のコードとの

つながり上、ルートを鳴らす必要がある場合もあります。

一応、コードの機能を決める最小限の構成音というテーマ

に沿って、紹介しておきました。アタマの片隅にでもあれ

ばアレンジやコピーの時に役立つでしょう。ここから逆に

音を厚くする方向は、各自の研究課題としておきます。




(EOF)